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1999年12月11日−−−−−パンの木

日経新聞の今日(土曜)の夕刊に「フードは語る」というコラムがあるが、読まれた方はいるだろうか。
写真家の西川治氏の話しである。かつて氏が小学生で、まさに食料難だったころ、南の国にはパンの木が
あると書いてある本をよみ、羨ましく思ったそうである。子供ゆえに、普段食べるようなパンが木になっ
ていると信じていたようだ。

数年前に氏は実物をみたそうだ。ソフトボールを二回り大きくしたくらいの丸い果実。デンプン質で、ゆ
でたり焼いたりして食べるものだった。

私が以前マナ島を訪れた時、年配の女性がこの実を割って、中味を出しているのを見学させてもらったこ
とがある。食べる機会はなかったが、日頃我々が食しているレベルの味には程遠いだろう。そう考えると、
マナ島の現地料理についてくる米がまずいなどとは言わないだろう。その米をおいしく感じ、もしくは、
その米さえ食べられない人が、あの小さな島の片側にはいるのだから。

昨今は、マナ島のホテルでも「和食」が提供が提供されるようになったと聞く。私個人としては、日本の
ものを持ち込むことは可能な限り控えた方が良いと思っている。たった数日の異国生活である。あなたの
人生から見ればマナ島での滞在時間は「まばたきの一瞬」でしかない。むしろ積極的に、その地の生活を
体験してみることをお薦めすしたい。


今回、まあ行ってみれば分かるのだが、以前でも多かった日本人観光客が更に増えているのだろうか。
しかしだからイヤということはない。なぜなら自分もその大勢の日本人の一人なのだから。
私は平均的日本人は「群れ作り」が好きであると思っている。むしろそれを素直に認めてしまう方が、
新しい展開があるのかもしれない。


団体旅行には、団体旅行の良さがある。一人旅の多い私などは、団体旅行でスーツケースを運んでくれる
だけで感激してしまう。テレビコマーシャルに出てくる女性プロゴルファーではないが、私が米国に行く
時などは、目的地に飛行機で到着したら、スーツケースを持ってレンタカー会社へいき、自分で運転して
目的地まで行くのが普通なのだから。

ただ、団体旅行のデメリットもある。たとえば団体で「パリ」へ行ったとする。そのグループの中では
日本語が通じ、日本の習慣でとおせる。しかし、考えてみると分かるが、これでは日本の社会(縮図)
を異国に持ち込んだだけで、日本にいることとたいして変わらないことになる。例えて言えば、茶の間で
外国のドラマを見ているようなものだろう。

我々が、道を歩いていて、外人が困っていたら声をかけるであろうか。まだしも相手が一人旅であるな
らが声もかけようが、グループであったらどうであろうか。ますます声はかけられないだろう。立場を
置き換えてみるといい。我々が、もし現地の人と新しい出会いを持ちたいと思うなら、こちら側は出来
るだけ小人数が望ましい。もちろん、一人なら一番相手も声をかけてくれやすいはずだ。


先日、このホームページに寄稿してくださった藤牧新平さんは、一人でどこの国へでも行くし、その地
でその国の人が食べているものであるならば、たとえそれが蛇のスープ(中国での話し)でも、まずは
食べてみるそうだ。そうして新たな出会いを楽しんでいる。考えてみれば、食生活なんて、他国からみ
たら偏見の対象に一番なりやすいものなのだろう。70才を超えた藤牧先生に出来るのならば、我々に
もやって出来ないことでもなさそうだが、いかがですか?


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